第9回バーゼル条約締約国会議
2008年6月24日 バリ、インドネシア
バーゼル条約禁止修正条項の発効への干渉
バーゼル・アクション・ネットワーク
ジム・パッケト

情報源:Basel Action Network, 24 June 2008
Intervention Regarding Entry into Force of the BAN Amendment
By Jim Puckett
Intervention_BAN_Amendment.pdf(英語版PDF)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年6月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/BAN/COP9/COP9_BAN_Amendment.html

 バーゼル条約禁止修正条項(the Basel Ban)が昏睡状態に陥り、毎日、毎年、バーゼル条約は大きなダメージを被っている。

 この禁止修正条項はかつてないほど、ますます必要になっている。ほんの数年前、世界は、コートジボワールのアビジャンで歴史上最悪の有害廃棄物投棄事件を目撃した。そして毎日、我々は、ゆっくりとした目立たない方法ではあるが、どの点から見ても極めて破壊的な廃船と電子廃棄物の絶え間ない猛襲を見ている。

 何らかの形で世界は変わり、グローバル化によって利用可能となった経路を通じて自分達のコストを外部化している先進国の目に余るやり方は最早問題ではない−という考えは全く間違っている。

 禁止修正条項は、この不道徳で非経済的で持続可能でない貿易を阻止する法的手段として、またそのような搾取は最早許されないという最も強い世界のメッセージを送るために必要である。

 また、この問題が途上国の施設を見ることだけに限定され、単純に途上国にある施設を何らかの形で認証すれば途上国に廃棄物を送り込むことができるとするのは、全く利己的でうぶな主張である。

 実際の施設がどうかということは、環境的に適切な管理(ESM)とは何かを我々が決定する際に考慮すべきことではない。途上国が有害廃棄物の大きな責任を渡されるということが何を意味するかを理解するために、その施設が存在する国での全体像を見なくてはならない。下流の廃棄物管理及び、労働安全衛生の訓練と専門的知識、労働者が病気になった時の診療所の利用可能性及び仕事に関する損害を取り戻す方法が適切であるかどうかについて考えなくてはならない。労働者の権利、法基盤、実施、及び監視能力等などについて考えなくてはならず、保護的基盤と安全策に関するそのような考慮項目のリストは非常に長い。

バーゼル条約禁止修正条項は現在まで13年間、足踏みさせられている。皆さん、バーゼル条約を発効させた締約国の数(訳注:20か国)の3倍以上にあたる63カ国が批准しているにもかかわらずである。

 我々は、OLA(Office of Legal Affairs 法務部)の見解で、「今日的アプローチ(訳注1」(current time approach)こそ、我々が用いる解釈でなくてはならないと聞いている。しかし、これは全く正しくない。虚報である。決定を下す加盟国がいない場合には、彼らが使用するデフォルトの方法は「今日的アプローチ」であるとOLAは単に述べているだけである。(訳注3)しかし、以前にノルウェーとEUによって述べられたとおり、加盟国は条約の主人であり、我々がどの解釈を望むかは我々の手続き規則によって決定することができる。そして、加盟国の大多数が禁止修正条項が可能な限り速やかに発効することを望んでいるということは全く明らかである。

 長年、加盟国は、「定時アプローチ(訳注2)」(fixed time approach)のみを条約の解釈とし、議論してきた。 あいまいさの観念が出て来るまで、今日的アプローチ(current time approach)がひとつの可能性であるということを誰も夢にすら見なかった。 しかし、みなさん、我々は第17条の言い回しはあいまいではないということをよく知っている。その文言を単に読むだけでは、定時アプローチ(fixed time approach )が示されていることがわかる。起草者らは、もし単に加盟国の3/4というつもりであったなら、なぜ”それら(訳注:禁止修正条項)を受け入れた加盟国の3/4”という語句にしたのか?

 皆さん、今日的アプローチ(current time approach)が主張するように、発効のために130カ国が必要であるとすることは禁止修正条項に死刑宣告するようなものであり、そのアプローチを支持する人々はそのことを知っている。彼らは禁止修正条項が死ぬことを望んでいる。みなさん、それは恥ずべきことである。この部屋で起きていることは恥ずべきことである−13年は長すぎる。禁止修正条項は2度、合意されて採択されている。まず1994年に、そして1995年に。それ以来COP毎に我々は全ての加盟国に可能な限り速やかに批准するよう促してきた。

 なんという偽善であろうか! 加盟国の大多数は、常に禁止修正条項を支持して来た。もうゲームは止めるべき時であり、この問題はこの会議で解決すべきである。我々には、手続き規則というものがある。禁止修正条項の発効のために、それらはある。我々は、加盟国がこの問題をこのCOPできっぱり解決するよう、そして禁止修正条項の速やかな発効を確実にするために行動するよう強く訴える。

ありがとうございました。


訳注1
今日(こんにち)的アプローチ(current time approach):
現在の加盟国数(170)の4分の3による批准(128)が必要であるとする解釈

訳注2
定時アプローチ(fixed time approach)
1995年に禁止修正条項が採択された際にそれに合意した加盟国数(82)の4分の3(62)で発効するとする解釈

訳注3
どの国も優柔不断ということで、または、JUSCANZの反対を恐れて、自発的に禁止条項を発効させようとリーダーシップをとる国がいないという状況を反映していると思われる。


訳注:関連情報


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